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フェルツ短文

05 31, 2010
フェルツの短文です。
「衛士の思惑」のお話で、ハイラが頑張ります。


****
男の口がせわしなく動いている。
よく喋る人だなあと悠長に感心しながら、さてどうやってこの事態を切り抜けたものかと私は考えを巡らせている。

A逃げる
B謝る

まあ……無難にBだろう。逃げたところで実質解決にならないし、再びこの衛士と出くわしたら、同じように難癖をつけられるに決まっている。ここは相手の言い分を受け止めてやり、卑下しすぎないように謝るのが一番だろう。

私はいつも衛士という衛士に絡まれてばかりいる。彼らとの折り合いのつけ方が下手なのか、根本的に「衛士」という人種とそりが合わないのか。この前も、見知らぬ若い衛士数人に囲まれ、御前試合に出場しないよう釘を刺されたことがあった。彼らの気持ちは分からないでもなかったし、それ以上揉めたくなかったから、誠実に頭を下げてその場は難を逃れた。

他にも、ユリリエという綺麗な女性と知り合って、少し舞い上がっていたところに背の高い衛士が現れた。ユリリエの元恋人だという彼は、「わしの女に手ぇ出しおってワレェ! ただじゃ済まさんぞワレェ!(要約)」といった様子で食って掛かってきた。衛士相手に殴り合いにでもなったら勝てる見込みはなく、平謝りして許しを請うたのだっけ。いやーあれは肝が冷えた。これが美人局というやつか……と都会の恐ろしさを身にしみて思い知ったのだった。

今回の相手は軽薄そうな若い衛士だった。飄々と声を掛けてきたかと思うと、いつの間にか因縁をつけられている。彼の言い分は、要約すれば「グレちゃんに近づかないでくれる?」といったところだろうか。最近グレオニーと仲良くなった私のことが、なにやら気に入らないらしい。

この額にある選定印のおかげで、私の人間関係は円滑に進んだ試しがない。今回だってきっとそうだ。この軽薄な衛士は、私が寵愛者だから同僚であるグレオニーに近づいて欲しくないのだろう。

「……って、聞いてる? 寵愛者様」

と、回想に耽りすぎたらしく衛士が怪訝そうにこちらを覗き込んでいる。私はとっさに取り繕って、「グレオニーには迷惑をかけません」と早口に答えた。こう言ってやれば、この衛士の溜飲も少しは下がるだろう。
しかし衛士は眉根を寄せて、余計に不審そうな顔になった。……何か変なことを言っただろうか。

「いやいや。私の話聞いてなかったでしょ? 迷惑かけるかけないじゃなくてさあ」
「……ハイラ、その辺にしないか」

と、不意に横合いから声が掛けられた。発声された方を見れば、いつもグレオニーと一緒にいる衛士――フェルツが、険しい顔で立っている。それから私を庇うようにして、間に割って入ってきた。
突然のことに呆気に取られていると、ハイラと呼ばれた衛士は矛先を変え、今度は彼に食って掛かった。

「出たよ。優等生のフェルツが」
「いい加減にしろ。失礼にも程があるだろう。お前はどうして寵愛者様を目の敵にするんだ」
「別に目の敵になんかしてないよ。直接お話するのも初めてだし。ねえ?」

話を合わせろとばかりに同意を求められるが、私は何も答えずにフェルツの背後に隠れた。とっさに彼の服を握り締め、その大きな背中に縋りつく。衛士に絡まれるのは慣れているはずなのに、何故だかこの時はそうせずにいられなかった。思いがけず差し伸べられた救いの手に、何かこみ上げるものがあったのだろうか。

「ほら見ろ。怯えてるじゃないか」
「……あれ。何? そういうこと?
寵愛者様はグレちゃんよりも、フェルツに興味がおありで?」
「はっ?」

突拍子もない質問に、私よりもフェルツが驚いている様子だった。「は?」と「え?」を繰り返しながら、背後と前方を交互に見やり、最後にハイラを睨んで「滅多なことを言うな」と言った。どう返しても都合のいい捉え方をされそうなので、私は押し黙っていた。

「ほら。何も言わないってことは、肯定の意味でいいんでしょ?」
「な、なんでそうなるんだ」

しかし斜め上をいったハイラが、勝手にそっち方面に持っていってしまう。

「あーあーあー、いつの間にそういうことになっちゃってたの?」
「べ、別にお前が思っているようなことは何もないって」
「またまた、お前も隅に置けないねえ。グレちゃんの親友面して、横から寵愛者様を掻っ攫ったんでしょ?
こりゃ面白い修羅場が見れそうだわ」
「だからそんなんじゃ……」
「なんでこういう面白い時にグレちゃんはいないんだろうね。そういう星の元に生まれたわけ?」

それからハイラは大声で周囲に呼びかけ、グレオニーを探し始めた。フェルツは狼狽し果てて、困ったようにこちらを振り返る。私もようやく彼の背中から離れて顔を上げると、自然と見つめあう形になった。

「ほら! 今! 今来ないとグレちゃん!」

ハイラが嬉々として騒ぎ立てている。私が敢えて否定しないことによって、その騒動はますます盛り上がったのだった。
****

こういう役回りにすると輝きを増す男ハイラ!
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Author:teracotta
衛士さんがとても好きです。
teracottaうpロダにて、二次創作キット作品を上げております。

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