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「テエロさんとダンスし隊」

09 20, 2010
テエロさんとダンスしたいようおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

という短文です。
キット用に書いていたので、読み辛かったらすみません!
ハイラが護衛の設定で、ご都合主義と気持ち悪さが半端ないのでご注意ください。

それと、キットDLと拍手ありがとうございました!!
遅くなってしまって申し訳ないのですが、お返事は次の記事に載せますね。


****


先日参加した舞踏会は散々だった。

ハイラを護衛につけてからというもの、僕が今まで避けてきた舞踏会にやたら参加させられている。この先、貴族社会でやっていくつもりなら人脈を作っておけとうるさいのだ。
ああいう場ではどうしても緊張してしまうのが僕の悩みである。談話するならまだしも、ダンスとなると運動神経の悪さも相まって、完全に醜態を晒してしまう。
どうしても誘いを断れず、踊るはめになった時は心臓が爆発しそうだった。案の定、派手に転倒して相手を怒らせてしまい、さらに周りにも笑われるという恥ずかしい事態に陥った。

そうして、とぼとぼと隅に引っ込もうとする僕に声は掛けられた。

「見たよ」

出たよ……。
お供として連れてきたハイラが、柱の影から顔を半分覗かせてこちらを睨んでいた。そのまま人気のない露台に連れ込まれ、説教を食らう。

「……アレはないでしょ。やる気あるの?」
「あんたが恥をかくと私も一緒に共倒れ、従者と主人は運命共同体なんだから、自覚してくれないと困るよ。もうあんた一人の体じゃないんだからね」

そんな台詞で説教されたのは初めてである。誰かに聞かれて誤解されても困るので、声を潜めろとハイラを小突いたが、彼は気にする様子もなく大きな声を出した。

「あーあー、もともと運動神経が悪いのは知ってたけどさ。それをあの場で発揮してくれなくてもいいでしょ」
「貴族っていうのは踊れて当然。優雅に滑ってトリプルアクセル決めろとまでは言わないからさ、
せめて見苦しくない程度に身につけてもらわないと」
「……そういうことだから、来週からダンスの練習をやってもらうよ」

こうしてハイラコーチの猛特訓が始まったのだった。


****


日々の勉強の合間に、ダンスの練習を挟むとなるとかなりのハードスケジュールである。せめて短期間で終わらせてくれと頼んでみたが、「それはあんた次第だね」と殺生な返事が返ってきた。

「まあ、次の舞踏会までには形になるようにしようよ。長くて一ヶ月弱だね」
「それで、肝心の練習の相手なんだけど。どうする? 私と二人でやる? それとも、誰か上手な人にお願いしてみる?」

てっきりハイラと二人でやるものだと思っていたので、その予想外の問いに僕は目を丸くした。
なるほど。言いだしっぺのハイラ自身、それほどダンスが上手いわけでもないのだろうか。そう訊いてみると、彼は肩をすくめて見せた。

「まあ人並みにはできるけどね。私も一応貴族の出身だし」
「でも、あんたの知り合いで上手な人がいるなら、そっちにお願いした方がいいでしょ。誰か心当たりがあるなら、私がお誘いしてきてあげるよ」

ダンスが上手な人。そう言われて真っ先に思い浮かぶのは、ユリリエやタナッセ、ヴァイルだった。
しかし、彼らも舞踏会に参加する面々なのである。こっそりダンスの練習をして「キャー、レハトすごい」と本番で褒められたいのだから、練習につき合わせてしまっては台無しになってしまう。

そうなると、貴族ではなくてダンスが上手な人。頭を捻りに捻ってみたが、該当する人物が出てこなかった。
そもそもダンスなんて貴族のお遊びだ。舞踏会に出ないのなら、身につける必要がない。あんな風に男女が体をくっつけてくるくる回るお遊びに……待てよ。

男女が体を? くっつける? 合法的に?

次の瞬間、素晴らしい考えが閃いた。別にダンスをしたことがなくても、身体能力が優れている人なら問題ないのではないか。一緒に練習をすれば、僕も士気が上がって練習がはかどる相手。
そうなると一人しかいなかった。膳は急げとばかりに「ハイッ!」と勢いよく挙手をすると、ハイラは一瞬びくりと驚いてから、「どうぞ」と言って意見を促した。

テエロがいいと思います!!!!!!!!!!!

腹の底からいい声を張り上げる僕とは裏腹に、ハイラが深刻そうな顔をして言った。

「あんた死にたいの?」


****


確かに、僕がテエロに嫌われているのは自分でもよく分かっている。でも恋はいつだって命がけなのだ。

「気持ちは汲んでやりたいけどね。脈なしどころの話じゃないと思うよ?」
「あっちは、あんたのこと嫌いどころか『隙あらば死ね』のレベルだよ。練習相手のお願いなんて、躊躇いもなく一蹴されるだろうね」

ハイラの苦言は最もだった。しかし、一度火がついた欲望はそう簡単に消せるものではない。
どうしても、いや、夢でもいいからテエロとダンスをしてみたい。なんかもうテエロとダンスをしてから死にたい。どうせ死ぬなら、テエロと手を繋ぎたい。
溢れ出る熱意を鼻息荒く説明すると、ハイラがドン引きした様子で口を開いた。

「分かった。分かったから落ち着いて、気持ち悪い。……そこまで言うなら誘ってきてあげるけど、断られても落ち込むんじゃないよ」
「まあ、そんなに夢想する相手なら、あんたも死ぬ気で練習するだろうし。悪くはないかもね」

ハイラは苦笑を浮かべながら、ひらひらと手を振って廊下へ出て行った。これで彼がテエロを連れてきてくれたらと妄想をすると、血圧が上がって卒倒しそうになる。とりあえず気を落ち着かせるため、椅子の上で正座をしながら目を瞑ってみた。
その表情は、まるで針山の上に座る行者の面持ちだったと後に語り継がれる。


****


扉が軋む音がしてそっと目を開く。廊下から響いてきた足音は二つ。その時点で、僕の心臓は早鐘どころかジェット音を轟かせた。
ハイラの後から続いて扉から姿を現したのは、僕の待ち望んだ人物だった。「彼」はいつもの無表情な顔で、唇を引き結んでいる。

「ほら、連れてきたよ」

ハイラに促され、僕は椅子を倒さん勢いで立ち上がり、「彼」を正面からまじまじと見つめた。
本当に本物だろうか。幻影とかそっくりさんじゃないだろうか。

「本物だよ。触ってみなよ」
「やめてください」

調子に乗って手を伸ばそうとした僕を、すかさず牽制する低い声。顔を上げれば、声の主にキッと睨みつけられてしまい、思わずシュンとなる。
……でも本物だ。この殺意に満ちた瞳は間違いなくテエロ。夢じゃない。
僕はこの状況が現実であることを一刻も早く確認するために、ハイラを隅に引っ張って、どうやって連れてきたのかと尋ねてみた。

「ま、簡単なもんだったよ。ヴァイル様をだしに使ってね……」

~回想~
「何の冗談ですか?」
「耳を疑いたくなるでしょ? 私も『この人正気じゃないな』って思ったんだよ。でもうちの寵愛者様って根っから変態だから、何言い出すか分からなくて」
「テエロさんに、ダンスの練習に付き合って欲しいんだって」
「お断りします」
「やっぱりねぇ。そうだよね。貴族のお遊びに付き合っていられるほど、お暇じゃないよね」
「……そうなると、あとはヴァイル様に頼むしかないか……」
「…………」
「ヴァイル様なら快く承諾してくださるだろうし。今からお部屋にお伺いしようかな」
「そうそう。うちの寵愛者様って、ヴァイル様と違って運動神経が死んでるんだよね。何もないところで転ぶし、何かあるところだと確実に転ぶっていうか」
「ダンスの練習なんてことになると、まあ確実に四十回は大転倒するね。ああ、ヴァイル様もお体が小さいから、巻き込まれて一緒に転んじゃうかも」
「そんなに転んだら、何十回とヴァイル様の上に覆いかぶさることになるか……想像に難くないよね?」
「…………」
「足なんかこう絡まって、二人して起き上がろうとしたら目が合って、そっと頬を染めてみたり」
「でも、もうヴァイル様にお願いするしかないね。テエロさんに断られちゃったから」
「…………」
~回想終わり~

「……とまあ、こんな感じで煽っといたから。連れてきたはいいけど、あんたに対する殺意がいつもの三割増になってると思うよ」

うおおおおなんだってー!
何かいつもより剣呑な雰囲気を纏っているとは思ったが、そんな恐ろしい事を吹き込んでいたとは。恐る恐るテエロを横目で窺うと、背後に鬼神の影が浮かんで見えた。

「言っておきますが、私は仕事もありますからそんなに時間を省けませんよ。それに、舞踏なんてしたことも……」
「大丈夫。テエロさんならすぐに身につくと思うよ。それより、問題はうちの寵愛者様だね。転びそうになったら抱きとめてやってくださいよ」
「嫌です」

即答だー!!
僕は再びシュンとなり、ハイラは面白がってニヤニヤ笑い、テエロは苦渋を浮かべたまま「では、また後日」と言って部屋を出て行った。……なんだか殺伐とした練習風景になりそうだった。


****


とうとう待ち望んだ練習の日がやってきた。前日から興奮して眠れず、ハイラを叩き起こして明日への意気込みを語りつくしてやったら心底迷惑がられた。仕舞いには「なんであんたの護衛になったんだろう」と洩らす始末だった。

貸切にしてもらった大広間にやってくると、既にハイラが呼んだ楽士が準備をして待っていた。後からやってきたテエロはいつもより不機嫌そうな顔で、天上から垂れ下がったシャンデリアを仰いでいる。貴族が嫌いだという彼は、貴族の集うこの華美な空間に、嫌悪感を感じているのかもしれない。
僕はおずおずとテエロへ近づき、来てくれたことの礼を述べてみたが、無言できつく睨まれただけだった。

「あらら。聞こえる聞こえる、憎悪の伸びる音が」

横でにやついていたハイラが、からかうように声を掛けてきた。

「ま、子ども時代最後の青春だと思って、全力で当たって砕けてきたらいいよ。死ぬほど嫌われてるんだから、もう下がるもんもないでしょ」

なんか絶望的みたいな言い方だった。身に染みてよく分かっているが、改めて言われると落ち込んでしまう。

「護衛としては、あんな怖い人と練習なんてさせたくないんだけどねえ。ダンスの最中に、隙あらば殺しにかかってくるかもしれないでしょ?」
「あっ、殺しにかかるなと思ったら『ナッパよけろー!』って言うから、あんた自分で上手いこと避けるんだよ」

ナッパって誰だ。
よく分からないが、「死んでもテエロと踊りたい」と無茶を言う僕を、案じてくれているには違いないのだろう。

「んじゃあ始めようか」

ハイラの指示で中央の配置につくと、楽士の奏でる音楽が大広間に響き始めた。
しかし、改めてテエロと正面から向き合うと、緊張と興奮で手が汗ばんでくる。服でごしごしと拭ってみたが、次から次へと出てくるので意味がなかった。こんなべたべたな手で彼に触れるのは申し訳ないが、あまり待たせるのも悪いので腹を括ってテエロの手を取る。一瞬、眉根を寄せられたような気がした。彼の冷えた手との温度差で、手と手の間で台風が起こるんじゃないかと心配になるほどだった。

「曲はアップテンポの三拍子だよ。他より覚えるステップは少ないから、単細胞でもなんとかなるでしょ」
「円をかいてぐるぐる回るんだけど、テンポが速いからとろいと転ぶかもね。そこはまあテエロさんにリードしてもらって……」

教えられる通りに足を動かしてみるが、ぎくしゃくとおかしな具合になってしまう。ダンスというより「あ、どうぞ」「あ、いやいやどうぞ」と道を譲り合っている風にしか見えない。
一方、テエロはさすがに飲み込みが早く、ステップも一通り覚えてしまったが、僕がひたすら足を引っ張っていた。

「何それ、スーダラ節? 真面目にやんなよ」
「私は真面目にやってますが、寵愛者様が」

なんか目の前で告げ口されている。そうしているうちに、見かねたハイラが傍に寄ってきて指示を出し始めた。

「だから顔は正面を向けるんだよ。テエロさんをちゃんと見て……え、何? テエロさんと顔を合わせるのが恥ずかしい?」
「馬鹿じゃないの? 心配しなくても、そこにあるのは憎悪に満ちた瞳だけだよ。何を一人で意識して……え、何? テエロさんの手を握るのが恥ずかしい?」
「馬鹿じゃないの? あんまりふしだらな事考えてると、テエロさんから蹴りが飛んでくるよ。
しゃんとしろ、オラァ! って」
「……別にそこまでしませんが」

こうして、テエロに睨まれハイラにどやされるという、飴と鞭な練習が数日続いた。


****


いよいよ舞踏会が間近に迫ってきた、練習も最後になろうかという日。ハイラが出した最後の課題は、一曲踊りきってみせることだった。
それなりに踊れるようにはなってきたものの、相手がテエロということもあって本番よりも緊張してしまう。「ダイジョブ、オドレル」と原住民のように呟く僕に、ハイラがこそっと耳打ちをしてきた。

「転んだら転んだで、可愛い悲鳴あげて抱きついたらいいじゃない。これが最後なんだから、未練のないようにね」

ハイラの天才め……。
わざと転ぶなどという計算高い真似はできないが、もし転んでもテエロに密着できて得だと考えれば、失敗も怖くない。
そんな心構えで挑んでみると、曲が流れると共に自然と足が動いた。テエロの足を踏んで睨まれるという、見慣れた一連の流れもなく、とうとう踊りきるかと思われた曲の終盤頃だった。

気の緩みが引き起こしたのだろう、ダンスの締めとなる、女役が一回転して戻ってくるという最後の見せ場で、僕は自分の足に引っかかって大きく体勢を崩した。体が前へと傾き、テエロの胸にダイブしそうになった瞬間、「どわー!」と思ったよりごつい悲鳴が洩れる。可愛さとは程遠かった。

「ナッパよけろー!」

僕が恍惚の表情でテエロに倒れかかろうという時、遠くからハイラの声が聞こえた。「何から避けなければいけないのか」という疑問符が浮かぶ前に、視界からテエロの体が遠ざかる。彼は一歩飛び退いて僕をかわすと、ただの医士とは思えぬ俊敏な動きで「反撃の構え」を取った。

乾いた音が大広間に響いた。それは限りなくビンタされた時の音に近く、実際、僕は頬ではなく額に打撃を受けていた。
テエロは一瞬、人体の急所である喉元へと的確に手刀を伸ばしていた。しかし、すぐに軌道修正を図り、その一撃をデコに見舞わせるに留めたようだった。額を突っぱられ、前へ傾いていた僕の体は、その衝撃で体勢を持ち直した。……転ぶことはなかったが、額に張り手を食らったのである。

「…………」
「…………」

痛いほどの沈黙が流れた。額に置かれた手の下から視線を動かすと、テエロが強張った表情で固まっている。その顔色から、故意にやったのではなく反射的に動いてしまった、という胸中が見て取れた。

「…………」
「…………」
「…………すみません、つい」

さすがのテエロも、動揺を隠せない声音で謝罪を述べる。別に痛かったわけではないので、僕は慌てて取り繕い、「だ、大丈夫、ほら、もともと額には青あざが……あ! 選定印だった!」と死ぬほど不謹慎な冗談を言って、場を和ませるのに失敗した。

楽師が驚いて演奏を止めてしまい、ハイラが出した課題が達成されないまま、最後の練習は幕を閉じた。
そうして、練習相手になってくれたことの礼を述べる僕に、テエロは再び謝罪を重ねて帰っていった。「不可抗力で抱きつく」という乙女イベントは逃したものの、テエロのレアな表情が見られたので、僕としては大満足だった。ハイラはいやらしい笑みを浮かべながら、

「寵愛者の徴に平手を食らわせるなんて、不敬罪もいいとこじゃない? あ、これを弱みに交際を迫ってみたら?」

とかなんとか悪いことを提案した。そういうのはいかんよ! 交際するならまず交換日記から始めないと! というのが僕の信条なので、そんな卑怯な手を使うつもりはなかった。
そして、テエロの見事な反撃を見届けた楽師は、「ありゃ隠密の動きじゃったよ……」と感慨深く言い残して去っていったのだった。


****


テエロさんに正拳突きされ隊(完)
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