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「青二才」

07 14, 2011
モゼーラさん憎悪ルートで、「主人公→モゼーラ」な設定です。
主人公が喋る上に気持ち悪いので、ご注意ください。

拍手もありがとうございましたー!
すごく嬉しいです!


****

あの女の気を引くために、ありとあらゆる手を尽くした。

まず、図書室からありったけ本を持ち出して、全力で返却期間を延滞し続けた。以前、あの女が本の持ち出しに頭を悩ませていたのを知っていたから、そのうち返却の催促に現れるだろうと見越していたからだ。
しかし、一ヶ月以上経ってもあの女は僕の前に現れることはなかった。一度、気の弱そうな男の文官がやってきて本を返してくれと言ったが、僕の目当てはモゼーラだ。「本を返して欲しければ、あの女を寄こすことだな!」などと言いつけて帰したが、やはりモゼーラは僕のところにやってこなかった。

ついに痺れを切らして、僕は直接図書室に赴き、モゼーラを怒鳴りつけてやった。「なぜ催促に来ないんだ、この職務怠慢文官が!」などと文句を言えば、あの女は涼しい顔をして、「では、今返してください」と言った。
なんて可愛くない女だろう。僕は頭に血が上り、ついには二ヶ月以上も延滞する暴挙に出たが、催促に訪れたのはやはり男の文官だった。

どんなに手を尽くしても、あの女は振り向かない。つれない態度を通り越して、嫌悪されているのを感じる。
なぜここまで嫌われているのか、その理由は分かっていた。彼女に軽蔑されていることも。

あのとき、床に投げつけられて壊れてしまった本。ページが散らばったその瞬間、彼女は大きく目を見開いた。
なぜ庇ってやれなかったのか。僕は本を投げつけた貴族の男に言われるまま、その場を後にした。気になって振り返れば、視界の端で屈み込むモゼーラが見えた。

そのとき、彼女はページを拾う手を止めて、こちらを見上げていた。
強く軽蔑が宿った瞳で。

****

衛士の男と、サナン伯爵子息の痴話喧嘩に巻き込まれるモゼーラを目撃した。何度も割って入ろうと思ったが、ついには機会を逃し、モゼーラが肩を怒らせて去っていくのを眺めるしかなかった。
モゼーラが他の男にダシに使われようとしていたことに加え、知りたくもなかった事実を知らされて、僕はひどく遺憾していた。

モゼーラがあの衛士の男に告白していたこと。
多情な雌猫の異名を持つモゼーラが、どこぞの見知らぬ男に粉を掛けていることなど日常茶飯事だ。でも、そのたびに僕は胸がしめつけられる思いになる。

長いこと逡巡してから、僕は先回りしてモゼーラを待ち伏せすることにした。見てしまった以上、文句の一つでも言ってやらねば気がすまない。
彼女の行く先はどうせ図書室だ。僕は図書室までの道のりをショートカットして中庭を突き進み、図書室に続く回廊の柱に身を潜め、彼女が現れるのを待った。

しばらくして、荒々しい足音と共に、廊下の角からモゼーラが現れた。まだ機嫌が直ってないらしく、胸に抱えた本を強く抱きしめて、ツカツカと一直線に歩いてくる。彼女が目の前を通り過ぎた瞬間、僕は隠れていた柱から身を乗り出して声を掛けた。

びくりと身を竦ませて立ち止まり、モゼーラはゆっくりと振り返った。僕の顔を見るなり、嫌な予感が的中した、とばかりに眉をひそめる。なんて失礼な態度だろう。

「見たぞ、モセーラ。お前、あのノースタスにも粉を掛けていたとはなぁ」
「……レハト様」

開口一番に嫌味をぶつけてやると、彼女は僕の名を呼んで、小さくため息をついた。

「本当に節操がないな、モゼーラ。僕が知る限り、お前が告白した男はこれで三人目だぞ。どこぞの文官と、ノースタスと、あとはニデ子爵か」
「……ニデ子爵は違います。笑えない冗談は止めてください」
「ふん。それにしても、擦り寄る男がもれなく女持ちとは一体どういう了見なんだ、モゼーラ。節操がないにも程があるというか、告白する前にちゃんと調べた方がいいというか、多情な雌猫ここに極まれりというか」
「ほ、放っておいてください。私が誰に想いを寄せようと、貴方には関係のないことです」

長々とその節操のなさを叱り付けてやれば、モゼーラはついに禁句を持ち出して、僕を睨みつけた。
……関係ないなんて、よく言えたものだ。返す言葉がないとなると、すぐに逆上して議論を終わらせようとする。これだから女は嫌なんだ。

「関係なくはない。もしお前が城中の男全員に振られて、告白する相手が見つからないとなれば、ついにはこの僕に色目を使うようになるかもしれないからな。大変な迷惑だ」
「……それは絶対にありませんから、ご安心ください」

この上なく可愛くない返事が返ってきた。最初はそういう目的で僕に近づいてきたくせに、思い通りにいかないとなると、すぐに手の平を返して突き放そうとする。これだから女は嫌なんだ。そういえば、前にも同じようなことを言われた気がする。確か、「貴方のような人間相手にどうして(笑)」とかなんとか……。

ああ、思い出しただけでも腹が立ってくる。僕はモゼーラに詰め寄って威圧してやろうとしたが、彼女がとっさに身を引いたので、距離は変わらなかった。……なんて可愛くない女なんだ。今度は逃げられないよう壁際に追いつめて顔を近づけると、モゼーラは必死に目を背けようとする。

「絶対にない、なんてどうして言い切れるんだ? お前は、男なら誰でもいいんだろう?」
「……私だって相手を選びます。それに、貴方は未成年じゃないですか。……もしかして、レハト様は男性を選ばれるおつもりなんですか?」

モゼーラは嫌そうな顔をしてそう尋ねる。僕はその期待に応えるように、口の端を吊り上げて言った。

「選んで欲しいのか?」
「……いえ、レハト様がどちらを選ばれようと、私には関係のないことです」

きっぱりと言い切って、彼女は視線を外した。
……か、可愛くない。「関係ない」という言葉がどれだけ僕を傷つけるか分からないのだろうか。その言葉を使うたびにモゼーラを減点してやったら、もうマイナス100点は超えている。

「お前! そこは可愛らしく上目遣いをして、『私のために選んでくださるの?』って言うところだろうが。そんなことも分からないからお前はモテないんだ。そんなんじゃこの先一生結婚できな……っておい! どこに行くんだモゼーラ!」
「仕事に戻ります。さようなら、レハト様」

すり抜けて図書室へ向かおうとするモゼーラの腕を、思わず掴んで引き止める。彼女は体勢を崩して、小さく悲鳴を上げた。

「きゃっ……。な、何をなさるんですか!」
「ふん、黙って僕についてくるんだ。教育的指導を施してやる」

後ろで暴れるモゼーラを引きずって、僕はとある場所へ足を向けた。

****

着いた場所は衣裳部屋だった。中に入ると、衣裳係は出払っているようで人の姿はなかった。
相変わらず、僕の腕を離そうと躍起になっているモゼーラを引きずって、衣裳がたくさん掛けられている場所まで進む。ようやく手を離してやれば、モゼーラはきりきりと目じりを吊り上げて文句を言った。

「こ、こんな場所まで連れ込んで……一体どういうおつもりですか!」
「うるさい。これを見ろ」

視線で示してやると、そこには仕立て途中のドレスが一つ、かけてある。落ち着いた色合いの、身体の線が出るような細身のドレスだった。

「……なんですか、これ」
「聞いて驚け。僕がお前のために仕立てさせた、特注の衣裳だ」
「えっ……」

ふふんと勝ち誇ったように鼻を鳴らす僕を尻目に、モゼーラは言葉に詰まって、呆然と衣裳を見つめている。もっと嬉しそうな顔をしたらどうなんだ。せっかくこの僕が、この失礼な女文官のために仕立てさせてやったというのに。

というのも、以前モゼーラが、衣裳部屋でドレスを眺めていたのを知っていたからだ。涎を垂らして食い入るように見つめる彼女に、着てみたいのかと尋ねたら、必死になって否定していた。しかし、それは本心ではないのだろう。モゼーラだって女なのだから、一度は煌びやかなドレスを身に纏ってみたいと思うのも当然だ。
何をやってもつれない態度ばかり取るこの女に、僕が用意した最後の切り札だった。押して駄目なら倒れるまで押し通せ、だ。ここまでされて心が揺れ動かない女はいないだろう。

モゼーラはドレスに手を伸ばし、その感触を確かめているようだった。高価な布をふんだんに使っているから、手触りだって一級品のはずだ。しかし、モゼーラはいつものように眉を寄せる。

「こ、こんな高価なもの……困ります」
「困るってなんだよ。下手な遠慮は相手の機嫌を損ねるだけだぞ。いいから着てみろ」
「着るって……」
「これを着れば、いくら色気がないお前でも少しは魅力的に見えるだろう。ちなみに、サイズが分からなかったから採寸が合ってないかもしれない。一度着てみて、きつかったら直させるから。特に腰周りとか」

僕はドレスを手に取り、もう片方の手でモゼーラの腕を掴み、試着室まで引きずっていった。衣裳を押し付けて無理矢理押し込み、カーテンを閉めてやる。中で暴れる音がしたので、カーテンの端を押さえて出られないようにした。

「ちょ、ちょっと! 困ります、こんなもの着るつもりはありません!」
「なんだ。着方が分からないのなら、手伝ってやろうか?」
「えっ……! け、結構です!」

さすがに、着替えを見られるのは嫌だったのだろう。怒鳴り声がやんだと思えば、ようやく布擦れの音が聞こえてきた。しばらく待っていると、カーテンが引かれモゼーラが姿を現した。

しかし、モゼーラはいつもの文官の制服姿のままだった。事態が飲み込めずにいる僕の前までやってくると、ドレスを突っ返して言い放つ。

「やっぱり、これは受け取れません。こんなもの……貴族が着る衣裳です」
「な、なんだ! せっかくお前のために仕立てさせてやったというのに……。ああ、やっぱり着方が分からなかったのか?」
「失礼します。そんなに着せたいのなら、どうぞ他の女性にでも。私は着るつもりはありません」

毅然と言い放ち、モゼーラは衣裳部屋から出て行こうとした。僕は面食らって、その後姿を呆然と見やる。胸に押し付けられたドレスが、床にずり落ちてくしゃくしゃになった。

「ま、待てよ! なんで……」

引きとめようと声を荒げるが、彼女は振り返らない。一体何が気に障ったというのか。やっぱりサイズが合わなかったのか、それとも……。
その考えが頭を過ぎった瞬間、途端に言いようもない怒りがこみ上げてきた。堰を切ったように、喉から言葉が溢れてくる。

「なんでだよ! 僕からのプレゼントだから嫌なのか!」
「…………」
「ノースタスだったらいいのか? あの男のプレゼントだったら受け取るのか!」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「だってそうだろ。ノースタスや他の男には笑いかけるくせに、僕には嫌な顔しか見せないじゃないか!」
「それは……」
「なんで僕じゃ駄目なんだよ。僕が……僕が、貴族だからか!」

ずっと避けていた疑問を口にして、自分で後悔する。そんなことは最初から分かりきっていたことだ。目を背けていただけの、どうしようもない事実。それを彼女自身の口から聞いたら、後には戻れなくなる気がして、僕は泣きそうになった。

「……そうです。貴方が、他の傲慢な貴族たちと、同じ考えを持っているからです」

モゼーラは的確に僕の嫌なところを指摘した。
僕はついに泣いた。
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