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「闇鍋」

07 23, 2011
うpが遅れて申し訳ありません!
ハイラと鍋の話です。

拍手もありがとうございました!
いつも嬉しく拝見させていただいております!


****
昼になったのを見計らって、僕は中庭へと足を向けた。
その目的は、衛士たちの炊き出しである。いつもこの時間に鍋をやっているのを知っていたから、通りすがりを装って昼食に参加してやろうと企んでいたのだ。

しかし、少し来る時間が早すぎたらしい。まだ作っている最中らしく、大きな鍋の前に立ったハイラが、袖をまくってかき混ぜているのが見える。それなりの家柄出身で、衛士の中でも見場がよく、女性の使用人たちにも人気がある彼が、ああして腕を振るっている姿はかなりシュールだった。当番制というわけでもなく、無理矢理やらされているわけでもないだろうに。むしろ自分から率先してやってるのでは? と思うほど、彼はよく炊き出しを作っている。

多分、料理もできるマメな男っぷりを見せつけてモテる作戦だ。炊き出しが行われる中庭は、使用人棟に囲まれた場所にある。下働きの女の子たちにその様子を見せて、裏でキャーキャー言われたいのだろう。なんて計算高い男だ。

僕はその野望を阻止するため、あと空かした腹を満たすために、いかもに偶然を装ってハイラに近づいた。彼はこちらに気づくなり、げっ、と顔をしかめて調理の腕を止める。

「またあんたか。何、お腹空いてるの? まだ出来てないから、もうちょっと待ってなよ」

給仕のおばちゃんのようなことを言って、ハイラは再び鍋に向かう。手際よく切った具を流し込み、焦げつかないよう柄の長い匙でかき混ぜ、たまに火の加減を窺っている。なんだか手馴れすぎててキモい。そんなにモテたいのか。僕だってモテたい。

と、ハイラが同僚の衛士に呼ばれ、鍋から離れていったときだった。……無人の炊き出しの前に、腹を空かせた寵愛者の図。ちょっと味でも確かめてやるかと小皿に手を伸ばしたが、それよりもっといいことを思いついた。僕はおもむろに、ポッケに忍ばせておいたある物を鍋に放り込んだ。ドボン、ドボンと思ったより派手な音が上がる。衛士に気づかれたらヤベェ! と辺りを窺うと、鍋を挟んだ向こうに、魔の形相をしたハイラが立っていた。いつの間に戻ってきたのだろう。その顔色からすると、しっかり僕の悪事を目撃していたらしい。

「……何を入れたの。今、何を入れたの」

低い声で問い質され、僕は視線を逸らしながら口笛を吹いて誤魔化した。答えるつもりはないぜ! という意思表示だ。ハイラはしばらく睨みつけていたが、埒が明かないと思ったらしく、匙で鍋の中を引っかき回した。やがて出てきたのは、ごろごろと粒ぞろいの栗だった。

「栗! あんた馬鹿か。なんで甘いものを鍋に入れるんだよ。せめて皮剥けよ!」

僕をしこたま叱りつつ、器用に栗をすくって小皿に上げていく。僕は素知らぬ振りをしながら、「やだぁーハイラさん、こんな昼食時に下ネタ? オナゴに幻滅されちゃうわよ」と女口調でからかった。悪乗りが過ぎたらしく、ピシリと匙で叩かれる羽目になった。

その後もハイラの横で鍋を眺めていたが、再びその機会は訪れた。火力が足りないことに気づいたハイラが、薪を取りに鍋を離れたのだ。僕はその一分足らずの隙に、ポッケに忍ばせていた第二段を放り込むことに成功した。薪を抱えて戻ってきたハイラが、僕の様子に気づき、慌てて鍋を確認する。出てきたのは……。

「蟹! あんた、なんでそんなもん持ち歩いてるんだよ。でも鍋の具にはちょうどいいか……。いや、どこで取ってきたの、この蟹!」

カニカニ言ってハイラが怒っている。実は、今朝方タナッセを連れて地下湖へ行ってきたのだ。見守っていたモルが蟹と戯れているのを見て、僕は飢えた野良猫のように、全部乱獲してやった。モルがちょっとガッカリしていたのを覚えている。

こうして、いろんなハプニングがあったが、鍋は無事に完成することになった。雑草をむしってきて入れようとしたのはさすがに阻止されたが。あれは美味い草なのに。
その後、鍋を食べ終わったグレオニーとフェルツに、デザートはいかがと栗を振舞うハイラを見て、こいつもなかなかの性悪だなと再認識したのだった。
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Author:teracotta
衛士さんがとても好きです。
teracottaうpロダにて、二次創作キット作品を上げております。

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