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「もしノースタスが護衛だったら2」

04 01, 2012
「もしノースタスが護衛だったら」の続きです。
書き溜めていたものなので長いです。

拍手もありがとうございました! とても励みになります。
お返事はまた次の記事で書かせてください。


****


ノースタスが僕を意識するようになってから、数ヶ月が経った。
年明けも間近に迫った今、僕は相変わらず、のらりくらりと彼からの求愛をかわし続けている。

ノースタスは以前より目に見えて迫ってくるようになった。「好きだ」とか「愛してる」とか、直接的な単語を口にすることはないものの、僕が曖昧な態度ばかり取り続けているせいか、徐々に焦り始めているようだ。

この間なんか、ふとしたきっかけで性別選択の話になったとき、彼は凄い勢いで「女性」を推してきた。

「レハト様はやはり女性を選ばれるのが良いと思います。私の経験ですが、男を選んだって良いことなんて一つもありませんよ。望まなくても髭は生えるし、髭どころかその他いろんなものが生えてくるし、朝なんか髭を剃るのに寝ぼけ眼で刃物をとらなくてはなりませんし、髭を剃ったつもりが豪快に頬を剃って一人流血沙汰になることもありますし、しまいには朝剃った髭が昼にはもうちくちくと生えてくる始末。レハト様に髭はお似合いになりませんし、やはり女性を選ばれるのが良いと思います」

髭の問題ばかりだった。
その場で性別選択の相談をしていたローニカすら苦笑するほどに、彼は「男の問題点」を語った。もし男を選ぼうものなら、成人の儀の晩に神殿へ引きずっていくでぇ……! という勢いだった。

彼がそこまで僕を女性にしたい理由も、もちろん分かっている。分かっていながら、僕は気づかない振りを続けている。このままでは駄目だと分かっていても、彼と正面から向き合う勇気がなかった。


****


優柔不断な僕が最後に頼る先は、もちろんあの人しかいない。恋愛事の専門家、我らが衣裳係の男である。
その日もノースタスを連れて衣裳部屋にやってきた僕は、彼から少し離れた場所で、衣裳係に相談を持ちかけた。彼は待ってましたとばかりに目を輝かせる。

「あらあら。その様子だと、まだふわふわとノースタスさんを弄び続けているのね。貴方って本当に罪なお・ひ・と」

ふう、と悩ましげにため息をつかれ、後ろめたい気分でその場に正座する。弄んでいるつもりはないが、結果的にそうなっているのは事実だ。この問題に決着をつけるにはどうしたら良いのか、彼に意見を仰ぐ。

「簡単なことですよ。貴方がノースタスさんをどう思っているのか? それをはっきりさせるには、そう、『お試し』してみれば分かること」

これはまた罪深い単語が出てきた。ごくりと喉を鳴らしてその意味を問えば、衣裳係はうっすらと魔性の笑みを浮かべ、顔を寄せる。

「デートよ、デート。自分の気持ちを推し量るには、一度デートしてみたらいいんですよ。もし彼を男として意識していれば、キュン、とくるものがあるはずだから。駄目だったらごめんなさいすればいいだけ。恋愛ごとの基本ですね」

デデデ、デート!
その免疫のない単語に、思わず大きな声を上げてしまう。耳ざとく聞きつけたノースタスが何事かと駆けつけてきそうになったが、すぐに手を上げて押しとどめる。
しかし、デートといってもどこで何をすればいいのか。経験がない僕には想像すらつかない。というより、そういえば僕は城から出ることができないから、この城内でどうやってデートしろというのか。

「そうねぇ。月並みだけど、やっぱり市に行ってみたらいいんじゃないかしら。気になるあの人とお買い物、なんてのはデートの王道ね。たとえば、あれ買ってこれ買ってとワガママに振舞ってみるの。それで彼が愛想を尽かせたら、貴方たちの縁はそれまでだったということ。どう? 試してみる価値はあるでしょう?」

衣裳係は再び目を細めて微笑む。その誘われるような笑みに、僕はどきまぎと首を縦に振るしかなかった。


****


ノースタスをデートに誘う。そう決めたものの、衣裳係からいくつか注意点を押されていた。
まずは、護衛として彼を連れて行っては駄目だということ。デートなのだから、プライベートで付き合ってもらう必要があるそうだ。

だから今、こうしてノースタスのスケジュール表を確認しているのだが、彼の「非番の日」があまりにも少ないことに驚く。これはノースタス本人の意思で、ほぼ毎日のように僕の護衛についていてくれている。
しかし、運良く市の日に空きを見つけた。誘うならもうこの日しかない。彼の唯一の休日まで潰してしまうのは心苦しいが、いちかばちかお願いしてみよう。

自室で机に向かっていた僕は、いつものように後ろで控えている彼を呼び、用件を打ち明ける。気恥ずかしくて、その目をまっすぐ捉えることすらできない。

「ああ、その日は非番ですが構いませんよ。レハト様には他の護衛はついていないのですから、私がお守りするのは当然のこと。どうぞ、いつでも気兼ねなくお申し付けください」

彼は完璧な笑みを浮かべて了承した。しかし、やはり誤解しているようだ。護衛としてではなく、普通に付き合ってもらわなければ意味がない。もごもごとのその事を伝えると、彼は一瞬眉根を寄せ、首を傾げた。

「え。それは……え、もしかしてそういう」

彼が確認しようとした途端、妙に恥ずかしくなる。とにかく約束を取り付け、再び机に向かった。
二人きりの部屋では、顔を背けていても気まずくて、その後の勉強もまったく頭に入らなかった。


****


待ち遠しいような、気が重いような日々が続き、やがてその日はやってくる。
デート当日の朝、部屋まで迎えに来たノースタスのめかし込みは完璧で、振る舞いすらいつもに増してジェントルメンだった。

小技を利かせたさりげないオールバックに、男の魅力を引き立てる無造作な髭。そして計算されつくしたコートの着こなしは、まるで絶壁の館に住むなんたら伯爵のような出で立ちである。

僕も朝から衣裳部屋で小一時間悩んだのだが、衣裳係がやたらずるずるしたドレスを着せてこようとするのをなんとかかわし、もう少し動きやすい衣裳を選んできた。しかし、ノースタスとのあまりもの対比に尻込みしてしまう。

まあ、今更着替えに戻るわけにもいかないので、腹を括って中庭へ足を向ける。「何をすればいいか分からなくなったらこれを見て!」と衣裳係に渡されたメモをさっそく開くと、「手を繋げ」と書かれている。
……ただでさえ変な汗をかいてべたべたなのに、そんな手で繋ごうものなら気持ち悪がられるかもしれない。このメモは役に立たないな、とポケットの中で握りつぶし、ノースタスの隣を歩く。

だが、ぎこちなく天幕を覗いているときだった。背後から声を掛けられ、振り返った途端、僕は顔をしかめることになった。そこには、今一番会いたくない顔があったからだ。

「あれー候補者様じゃない。こんなところで奇遇ですね。……おや? そちらはどこの伯爵様?」

軽薄な衛士ハイラさんの登場である。見なかったことにして逃げ出したい気分だったが、そうもいかなかった。本当は分かっているくせに、めかしこんだノースタスが誰だか分からないという風に尋ねてくる。デジャブだ。

「なーんだ、ノースタス先輩じゃない。どうしたの? 今日は舞踏会の帰り?」
「……レハト様、あちらの天幕に参りましょう。ここは少し空気が淀んできたようですから」

しかし、今日のノースタスは一味違った。ハイラの売り言葉に食って掛かることなく、流れるように僕の肩に手をまわして背を向ける。ハイラから距離を取るように引き寄せられ、僕は手どころか首にまで変な汗が出た。

「ちょっとちょっと、冷たいんじゃない? せっかく可愛い後輩と久しぶりに顔を合わせたんだから、世間話に花を咲かせるのが社交辞令ってもんでしょ。ねぇ候補者様? ところで今日はデート?」
「うるさい。なんで最後自然に訊いてきたんだ。見て分かるなら聞くな。邪魔をするな。空気を読んでどこかへ行ってくれ」
「邪険にしすぎでしょ、先輩。別に邪魔なんかしないからさぁ、ちょっと構ってくれてもいいじゃない。今班長に追われてんだよ」
「なんだ、また巡回をサボってるのか?」
「いやいや、今日は非番。だけど、なんか一人休んだとかで代わりを探してるらしくてさぁ。うっかり衛士服なんか着てきたから、目つけられてて。休日まで貧乏くじ引きたくないよ」
「班長は誰だ? 呼んできてやろう」
「ちょっと勘弁してよ。ところで今日はデートなの? いいね、微笑ましくて。せっかくこんなところで会ったんだからなんか買ってあげよっか、候補者様」

邪魔する気まんまんだよこいつ!
途端にノースタスが恐ろしい形相でハイラを睨みつけ、痛いほど僕の肩を抱く。わざわざ寄ってくる軽薄衛士から少しでも引き離そうとしているらしいが、ハイラはどこ吹く風で楽しそうに露店を眺めている。

「この耳飾りなんかどう? 私が買ってあげた記念にずっと身に着けてたらいいよ、後生大事に」
「レハト様、何か欲しいものがあれば私にお申し付けください。あと知らない相手から何か貰っても、その場で捨てるようにしてください。危険ですので」
「え? 同じものを二つ買って、私とお揃いでつけてたい? いいよぉ、じゃあこれ二つください」
「ハイラァ……!」

根負けしたのはノースタスだった。ハイラが冗談で言っているのは分かりきっているが、さすがに我慢ならなくなったのだろう。
さっさと支払いを済ませたハイラは、耳飾りをちらつかせながらニヤニヤと笑った。

「嘘だよ、冗談。これ二人でつけてたらいいよ。初デート記念ってことで、私からのお祝い」

威嚇の唸りを立てるノースタスに怯むことなく、その手に耳飾りを握らせると、彼は軽快な笑い声を残して去っていった。

……デート中に、別の男から買ってもらったものを二人でつけるってどういう状況だろう。ノースタスは受け取った耳飾りを手に立ち尽くしていたが、すぐに店主に返却して僕の手を取った。
後輩からのプレゼントをマッハでなかったことにするあたり、彼の決断力に脱帽せざるを得なかった。


****


ハイラの登場で狂わされてしまったが、今日は僕もいろいろ作戦を練ってきたのだ。まさかヤツに先手を取られるとは思わなかったが、ノースタスに何かプレゼントを買うつもりだった。いつも護衛をしてくれているお礼と、自分の気持ちに決着をつけるために、彼が喜ぶものを買ってあげたい。

衣裳係にはワガママに振舞えと言われたが、さすがにそれは気が引ける。むしろ既にいくつか露店をまわっているが、こちらから頼まずともノースタスはいろいろ買い与えてくれた。お金を持ってきているからと断っても、気にする必要はないと一蹴され、僕の手はアクセサリーやら焼き菓子やらでいっぱいになっていく。

このままではいかん、と決心して、僕は一つの天幕で足を止めた。他とは違った雰囲気のアクセサリーが並べられているのが目に入り、そこで何かプレゼントを買うことに決める。

眺めれば眺めるほど、そこの商品は妙なオーラを纏っている。というか、なんだか禍々しい。年代物なのか妙に色褪せているし、品質管理を疑うほど欠けてしまっているものもある。真剣に見入っていると、店主が愛想よく話しかけてきた。

「おや坊ちゃん、お目が高い。ここにある商品はすべて年代物でして、いろんないわく付きのアクセサリーばかりなんですよ。たとえば、これの前の持ち主はとある貴族の子息で……」

怪しげな髭を生やした店主が、饒舌に商品の説明を始める。やれこの指輪は人の心を惑わせるだの、この首飾りは心変わりした者の首を絞めるだの、なんだか恐ろしい逸話ばかりだった。というか、どこかで聞いたことがあるぞ。アレは確か、前にノースタスのプロポーズ作戦を決行したときだったか。彼がどこかで手に入れてきた指輪が、似たような代物だったはずだ。

横を見やれば、真剣な顔つきで品定めをしているノースタスが目に入る。もしかしてこういうオカルト的な話を信じるタイプなのだろうか。商品を手に取っては、店主に説明を求めている。最終的に彼が目に付けたのは、黒ずんだ宝石の嵌められたブローチだった。

「おお、それはこの中でも一番のいわく付きなんですよ。これまでの持ち主は若い女性ばかりで、全員非業の死を遂げています」

死んでるー!!
なぜこれが検問を通ったのか、疑いたくなるような代物だった。なんでも、前の持ち主は身分違いの恋をしており、相手は使用人の若い男だったそうだ。親に反対された二人は引き離され、別の男と結婚させられた晩に、彼女は死体で発見されたらしい。その胸には、別れた男から貰ったブローチが輝いていたと店主は語る。

……それ針に毒でも塗られていたんじゃないの、と思わず突っ込んだが、ノースタスの耳には入っていなかった。というか、ちょうど店主に代金を支払っているところだった。

買ってるー!!
今日一番の驚愕に顔を引きつらせる僕に、ノースタスは何事もなかったようにブローチを懐にしまい、優しげに笑みを浮かべた。今日はもう帰りましょうか、と差し出された彼の手を取るのに、かなりの葛藤を要した。


****


寝巻きに着替えて、蝋燭に火を灯す。
ノースタスはもともと非番だったため、今日は部屋まで送ってもらったところで彼とは別れた。机の上に市場で購入したものを並べてため息をつく。
結局、ノースタスにプレゼントを渡せなかった。自分の気持ちに整理がついてきたが、彼に打ち明けられないまま終わってしまった。別れ際に、不気味に微笑むノースタスの顔が焼きついて、今日は眠れそうにない。

もう考えるのはやめよう。頭を振って気持ちを切り替えると、机に並べたものをしまおうと手を伸ばす。しかし、ふと硬いものが指に触れ、僕は手を止めて視線を落とした。

黒ずんだブローチが、蝋燭の明かりに照らされて輝いていた。


****


ノースタスが病んできた!
完!!
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teracottaうpロダにて、二次創作キット作品を上げております。

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